給与計算・電子申請に強い社労士が、労働問題、労働者派遣、就業規則作成・変更、助成金申請を丁寧にサポートする相模原市中央区の荻野社会保険労務士事務所。
〒252-0231 神奈川県相模原市中央区相模原6-22-9朝日相模原ビル704号
営業時間:9:00〜17:00(土日・祝日を除く) ビル1階に「日本年金機構ねんきん
サテライト相模原中央」という赤い看板が2つあります。入口はビルの側面です。
お気軽にお問合せください
042-786-7580
Q従業員に、就業規則に違反する行為があったので懲戒処分として「減給の制裁」を科すことにしました。この場合、月例給与からの減給及び賞与もマイナス考課してよいのでしょうか。 (Y社・総務部)
A 会社は、従業員の職場秩序義務違反や不祥事に関して、就業規則に定める懲戒規定に基づき懲戒処分をする場合があります。懲戒処分の種類には、その事案の軽重に応じて、「けん責」「減給」「出勤停止」「降格・降給」「諭旨解雇」「懲戒解雇」などがあります。
このうち、「減給」とは、本来何もなければ得るべきはずであった賃金額から一定額を差し引く懲戒処分です。この減給の制裁に関しては、労働基準法上の制裁規定の制限があり、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」(第91条)と定められています。つまり、一給与計算期間内に処分の対象となる事案が1つであった場合には、減給は「平均賃金の1日分の半額」が限度で、複数事案あっても「一給与計算期間に支払うべき賃金総額の10分の1を超えてはならない」ということです。
この場合、減給の対象事案の考え方として1事案をどのようにとらえるかということがあります。例えば、遅刻について月1回で1事案とみることもできますし、月3回した場合に1事案として減給の対象とすることもできます。どのようにするかは会社側の裁量ですが、就業規則に、例えば「月3回遅刻した場合には減給とする」などと定めておく必要もあります。
また、遅刻や無断欠勤に関して、その不就労時間相当分の賃金を無給とし、賃金を支払わないことは「減給の制裁」には該当しません。単に、ノーワーク・ノーペイの原則に基づくものです。しかし、不就労時間相当分を超える額の賃金を支払わない場合は、その超える部分については「減給の制裁」となり、前述の労働基準法第91条の制限の適用を受けます。
次に減給の額についてですが、例えば対象労働者の月給が約30万円で、平均賃金が1日当たり約1万円であれば、対象事案1つについてその額の半額(5000円)が限度となります。一給与計算期間内に対象事案が複数あっても、その総額は10分の1(約3万円)が限度となります。遅刻・欠勤があっても、その不就労時間相当分の賃金控除以外に前述の範囲内で懲戒処分としての減給ができることになります。
ご質問にもある、月例給与からではなく「賞与」から減給することができるかについてですが、「制裁として賞与から減額することが明らかな場合は、賞与も賃金であり、法第91条の減給の制裁に該当する」(証63.3.14基発150号)との通達もあり、賞与からの減給も可能となります。しかし、この場合も当然ながら労働基準法第91条の制限を受けることになります。
また、懲戒処分として月例給与で減給し、さらに賞与でも減給することは、上記の範囲を超えることにもなり、さらに実質的な二重処分ともなるのではないかという問題も生じますので、慎重に対応しなければなりません。
なお、賞与とは、その支給の有無、支給時期、評価要素(勤怠、貢献度、懲戒の有無等)、評価期間などについては、労使間で特別の取り決めがない限り会社の裁量となり、その評価要素に基づき増減させることは、当然に認められるべきものです。この場合、評価要素として懲戒処分を受けたことを考慮することに差し支えありませんが、その評価に基づいて算出された賞与の額からさらに減額することは、実質的に減給制裁となります。そのため、少なくとも減給制裁の範囲を超える場合は違法と判断されるにもなりますので、注意しなければなりません。
今月のポイント
就業規則の懲戒規定に基づき懲戒処分とする場合は、労働基準法第91条の制限内で給与及び賞与の減給は可能。また、懲戒処分を賞与の評価要素にすることも差支えはないが、その評価に基づいた賞与額から更に減額すると二重の減給制裁となる。
去る5月10日に雇用保険法の一部改正が国会において可決・成立し、2025年4月1日以降、順次施行となります。今回の改正は、雇用保険被保険者の適用拡大や自己都合離職者の給付制限の見直しなど、企業及び労働者のいずれにも影響があるものとなっています。
被保険者の適用拡大
現在、雇用保険の被保険者となるには、①1週間の所定労働時間が20時間以上であること、②31日以上雇用される見込みがあることの2つの要件を満たさなければなりません。しかし、週の就業時間が20時間未満の労働者が増加していることなど、働き方や生計維持のあり方の多様化が進展するなかで、雇用のセーフティネットを広げるために、➀の週所定労働時間について「週20時間以上」から「週10時間以上」に引き下げることになりました。
これにより、最大500万人程度が新たに雇用保険の適用を受けることが見込まれます。パートタイマー等の短時間労働者(学生を除く)を多く雇用している企業は、社会保険の適用拡大と同様に雇用保険の被保険者となる雇用者が増えることにより、法定福利費の負担が一層増えることとなります。
被保険者期間の計算の見直し
被保険者の適用拡大に伴い、被保険者が失業した場合に支給を受ける基本手当(失業手当)の受給要件の見直しも行われました。基本手当の支給を受けるには、離職日から遡って前2年間に雇用保険の被保険者であった期間が12カ月以上(会社の倒産・解雇、雇止め等の理由により離職した場合は離職日前1年間に6カ月以上)なければなりません。現行法上での「被保険者期間1カ月」とは、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上である月をいいます。改正法では「賃金の支払いの基礎となった日数が6日以上ある月」または「賃金の支払いの基礎となった時間数が40時間以上ある月」を被保険者期間1カ月とすることになりました。
給付制限の見直し
現在は、自己都合で退職した者が基本手当の支給を受けるには、原則として2カ月間の給付制限期間が設けられており、その間は失業していても基本手当の支給を受けられません。しかし、今回の改正では給付制限期間を1カ月とし、失業期間中や離職日前1年以内に雇用安定及び就職促進に資する一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されます(2025年4月1日施行)。これにより、失業中でも一定の生活費を確保しながら教育訓練を受けられ、転職も有利に展開することが可能となります。ただし、5年間で3回以上自己都合で離職した場合の給付制限期間「3カ月間」についての変更はありません。
教育訓練受講中の生活給付の創設
現在は、労働者が在職中に自発的に職業に資する教育訓練を受けるために休暇(職業訓練休暇)を取ったりして仕事を離れても、訓練期間中の生活を支援する仕組みがありません。そこで、被保険者期間が5年以上ある者が無給の教育訓練休暇を取得した場合、教育訓練休暇給付金として賃金の一定割合を支給することになりました。給付内容は被保険者が離職される場合に支給される基本手当と同額で、給付日数は被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれかとなります(2025年10月1日施行)。
その他
以上の他、受講費用の一部が支給される教育訓練給付金においては、一定の要件を満たせばさらに10%が追加支給されることになりました(2024年10月1日施行)。現在、再就職に伴って支給される就業手当の廃止や就業促進定着手当の上限を基本手当の支給残日数の20%(現行は原則40%)に引き下げるなどの改定もあります(2025年4月1日施行)。また、失業中の受給資格者が認定期間中に働いて収入を得た場合の基本手当の減額規定が削除されました。
商工組合中央金庫が5月に公表した「『物流の2024年問題』に対する中小企業の動向」によると、「物流の2024年問題」に対するリスクの認識・対策状況について、トラック運送事業者の80.8%が事前に対策に着手していたことがわかりました。一方、荷主事業者は58.2%にとどまっています。また、同問題によって受けることが予想される影響についても、コンプライアンスリスクの増大を懸念するトラック運送事業者が26.6%いるのに対して、荷主事業者は5.5%であるなど、荷主側の危機感の醸成が進んでいない可能性があると指摘されています。
日本企業と外国企業との協業連携がこの10年で件数は約3倍、金額は約5倍に拡大していることを受けて、経済産業省が「外国企業と日本企業の協業連携事例集」を作成、公開しました。これは日本企業が海外企業との協業連携を通じた事業拡大やイノベーション創出を図る際の参考にすることを目的としたもので、企業の規模や業種、出資形態(M&A、少額出資、共同出資)が異なる11社の事例を実名で紹介。外国企業との協業連携の意義や協業に至る経緯、留意点、協業後の成果などについても盛り込んだ実践的な内容となっています。
経済産業省、厚生労働省、文部科学省は共同で「令和5年度ものづくり基盤技術の振興施策」(2024年版ものづくり白書)を取りまとめ、公表しました。白書では、製造業のグローバルなビジネス展開において、利益率が低水準にあることを指摘。現状を克服し、製造業の「稼ぐ力」を向上するためには、CXによるグローバルな事業活動に適した経営・組織の構築や、DXによる製造機能の全体最適化、事業機会の拡大といった取り組みが求められると述べています。そのうえで課題に取り組む製造事業者の事例などが掲載されています。
厚生労働省が公表した「毎月勤労統計調査 令和5年度分結果確報」によると、2023年度の現金給与総額は33万2533円(前年度比1.3%増)でした。このうち一般労働者は43万8696円(同1.7%増)、パートタイム労働者は10万5989円(同2.4%増)で、パートタイム労働者比率は31.93%(同0.60ポイント上昇)となっています。また、一般労働者の所定内給与は32万5504円(同1.8%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1294円(同3.5%増)。ただし、物価が上昇しているため、実質賃金指数は前年度比2.2%減となっています。
企業の設備投資は生産性を向上し、経済を成長へと導く重要な要素の一つです。深刻化する人手不足に対応していくためにも省力化に向けた投資が必要とされていますが、企業の取り組みはどのような状況なのでしょうか。帝国データバンクの調査から確認します。
約6割が設備投資を予定
帝国データバンクが4月に実施した「2024年度の設備投資に関する企業の意識調査」によると、2024年度に設備投資を実施する「予定(計画)がある」(「すでに実施した」「予定している」「実施を検討中」の合計)企業の割合は58.7%でした。前年の同調査より1.8ポイント低下しており、前年を下回ったのは4年ぶりです。
一方、設備投資を「予定していない」企業は33.1%で、前回調査から2.0ポイント上昇しています。
デジタル投資は約4割
次に設備投資の「予定(計画)がある」と答えた企業に、設備投資の内容について尋ねたところ(複数回答)、「設備の代替(入れ替えや交換、更新など)」(58.9%)が最も多く、次いで「既存設備の維持・補修」(29.8%)、「省力化・合理化」(25.7%)、「DX」(24.8%)、「情報化(IT化)関連」(22.2%)の順となっています。
このうち、「DX」「情報化(IT化)関連」のいずれかを選択した企業は全体の37.4%、前回調査からやや低下したものの、4割近くの企業が業務の効率化に向けたシステム導入などのデジタル投資を進めていることが見て取れます。
また、設備投資をする際の主な資金調達方法については、57.1%の企業が回答した「自己資金」が最多。次いで金融機関からの借り入れが28.7%(「長期の借り入れ」の22.0%と「短期の借り入れ」の6.7%の合計)、「補助金・助成金」が5.3%と続いています。
資金面の負担が増加
一方、設備投資を「予定していない」企業に対してその理由を尋ねた結果は下図表の通りで、「先行きが見通せない」が最多。企業の規模別に見ると、中小企業は「先行きが見通せない」「借り入れ負担が大きい」「手持ち現金が少ない」において大企業よりも5ポイント以上高く、中小企業の資金面に対する不安がうかがえます。調査には「物価上昇に伴い機械関係が高騰、支払いのめどが立たない」(各種商品小売)や「最近、特に設備代金が高くなっており、以前の見積もりの1.5倍程度の負担になるため、設備購入・更新が出来ない」(機械製造)といった声が寄せられており、円安や物価上昇が妨げになっていると考えられます。
4月の配置転換命令を巡る訴訟で最高裁判所第二小法廷が下した判決は、職種限定合意のある配置転換に関する新たな判例であり、今後の労務管理に大きな影響を与えると予想されます。そこで、求人・採用から契約締結、雇用継続に至るまで、配置転換における留意点を確認しましょう。
判決の経緯
2024年4月26日、配置転換に関する損害賠償請求訴訟において、最高裁第二小法廷は配置転換命令を有効とした控訴審判決、審理を差し戻しました。本件は、技術職として長年勤務した従業員を、個別同意を得ることなく事務職に配置転換することの妥当性が争われた裁判です。
第一審及び控訴審では、職種を限定とした書面による合意はないものの、職務内容や長期雇用の慣行化、専門職としての経歴や採用の経緯などの実態から判断して、黙示の職務限定合意が認められました。一方、本職務に係る業務が廃止予定であることや事務員に欠員が生じていた実態を踏まえて、現状における配置転換命令は解雇を回避する目的であり、業務上必要があるとして、就業規則における使用者権限は有効、損害賠償請求は棄却されました。
しかし最高裁判決においては、第一審及び控訴審での判決を支持しながらも、職種限定合意が存在する場合の配置転換には当然個別同意が必要であり、本件においては、個別同意が得られない場合の例外としての使用者権限も有しない、つまり、そもそも配置転換命令権は有しない、との判決に至っています。
配置転換命令権とは
配置転換とは、人材育成や雇用維持などを目的として、職務内容や勤務場所を長期にわたって変更する人事異動のことを指します。就業規則に「配置転換を命じることがある」との根拠規定を受け、労働者に周知した上で、労働条件の変更内容に合理性がある場合に配置転換における使用者権限は有効となります。
ただし、配置転換命令権(以下、配転命令権)には、使用者の一方的な権限行使とならないように、①業務の必要性、②人選の合理性、③配慮義務に留意する必要があります。例えば、内部告発による逆恨みなど動機や目的が不当な配置転換は、配転命令権の権利濫用として無効となります。また、通勤に長時間を要したり、家族の介護や転居が困難な事由があったりするなど、労働者の私生活に通常甘受すべき程度を著しく越える不利益があると見なされる場合も無効となります。
個別の労働契約と配転命令権
配転命令権を行使するにあたっては、職種や勤務地が限定されてると解される労働契約の場合、その限定された職種や勤務地の範囲が配転命令権の範囲となります。業務の必要上、配置転換を要する場合は、個別同意が必要です。対象労働者の同意を得られた場合は、使用者権限は有効と認められますが、同意の有効性については、労働者は使用者の指揮命令下に服す立場であることから、具体的かつ十分な説明を行い、情報を提要した上で、労働者の自由な意思に基づいてなされた同意であることが求められます。
一方、対象労働者の同意が得られない場合、個別同意なしに配置転換を命じることが出来るか否かについては、雇用状況に応じて使用者権限の是非が問われることになります。例えば、長期雇用が慣行化している労働者に対し、当該職種や勤務地が廃止された場合や本人の能力が低下した場合においては、配転命令権は解雇を回避し雇用を維持するために必要な措置として、使用者権限が有効であると判断されます。
労働条件明示事項の追加義務
さらに個別の労働契約においては、2024年4月以降に契約締結・更新した場合、改正労働基準法施行規則等に基づく労働条件明示事項の追加義務に留意して、職種や勤務地が限定されているかの判断を行う必要があります。
労働条件明示事項の追加義務では、すべての労働契約締結時と有期労働契約更新時のタイミングごとに、雇入れ直後の就業場所・業務などの内容に加え、将来の配置転換などにより変わり得る就業場所・業務の「変更の範囲」について明示することが求められます。例えば、あらかじめ就業規則などの規定によりテレワークを行うことが想定されてる場合は、就業場所としてテレワークを行う場所が含まれるように明示しなければなりません。
そのほか、有期労働契約締結時と更新時には更新上限の有無と内容、無期転換申込権が発生する契約更新時には無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を明示することが必要となります。
改正職業安定法においても同様に、労働者募集を行う場合には、求職者に対して労働条件の明示事項の追加が義務となります。追加事項は、上記の就業場所・業務に関する「変更の範囲」のほか更新回数の上限を含む「有期労働契約を更新する場合の基準」があります。
労働契約において明示事項を追加することにより、労働者は自身の将来を予見しやすくなります。使用者は、採用する労働者の将来像を踏まえて内容を吟味し、記載事項に抜け、漏れがないように注意して、書面または労働者の希望によりメールにて、明示・説明することが求められます。
配置転換における留意点
企業において、その特性上、転勤や長期出張を含む配置転換がある場合は、必ず就業規則等に明確に規定しておかなければなりません。また、求人を行うにあたって配置転換の可能性がある場合には、求人情報にその旨を記載しましょう。さらに採用面接においても、充分に内容説明を行い、段階を踏んで、労働者本人が納得した上で労働契約を交わすことができるように、丁寧に対応することが重要です。
ただし、就業規則に規定されているからといって、むやみに配転命令権を行使できるわけではありません。個別の労働契約においては、配置転換について、会話の中で触れるだけで説明したつもりとなっているケースも見受けられます。その場合、労働契約の内容についてのお互いの認識に齟齬が生まれ、不信感から労働問題に発展することにもなりかねません。特に専門的な職種については、職種限定の黙示合意があると考えられるため、配転命令権を行使する際は、業務上の必要性を明確にして、慎重に人選を行い、対象労働者に対して意向確認を行うことが重要です。
配転命令権が権利濫用で無効とされる判断基準には、育児・介護の状況に配慮されているか(育児・介護休業法第26条)、ワーク・ライフ・バランスへの配慮がなされているか(労働契約法第3条第3項)も含まれています。キャリアや生活環境など労働者個人の人生設計に与える影響に留意し、職種・地域限定合意の有無にかかわらず意向確認を行うなど、企業と労働者が共に成長できる配置転換を目指していきましょう。
お電話でのお問合せはこちら
042-786-7580
受付時間:9:00〜17:00
(土日・祝日を除く)
※予約をいただければ土日
の対応可能です。お気軽に
お問合せください。
※メールでのお問合せはこちら
office@e-syaroushi.com
親切、丁寧な対応を心がけております。上記のような
ご相談はもちろん、疑問や悩み事など、遠慮なくご相談く
ださい。特定社会保険労務士には、守秘義務があります。