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Q 就業規則上の就業時間は9時~17時30分の7時間30分労働(休憩1時間)ですが、新たに採用した労働者との合意のもとで労働契約書の労働時間を9時~18時の8時間労働(休憩1時間)としました。問題ないでしょうか。 (H社・総務部)
A ご相談の内容は、就業規則の所定労働時間が7時間30分、労使で合意した個別の労働契約書の所定労働時間が8時間でともに法定労働時間内なので、問題ないかということでしょう。
就業規則は、その会社で働く労働者に共通する労働条件を定めており、労働契約書は個々の労働者との労働条件を定めています。ご相談のように就業規則の労働条件と労働契約書の労働条件が異なる場合には、労働者保護の観点から労働者にとって有利な労働条件が有効となります。就業規則が労働契約書より有利なら就業規則に基づくことになり、労働契約書のほうが就業規則より有利なら労働契約書に基づくことになります。
就業規則と労働契約書との関係について、労働契約法では次のように定めています。
①「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない」(第7条)
②「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による」(第12条)
①については、就業規則が個別に締結した労働契約の内容を補充することを定めた上で、かつ、労働契約で合意した労働条件の部分は就業規則に優先することを定めています。
しかし、②では労働契約で合意した労働条件が就業規則よりも労働者にとって不利な場合には、就業規則で定められた労働条件が優先することを定めています。
したがって、労働者との個別の労働契約で定めた労働条件については、その内容が就業規則で定める労働条件を上回る部分については有効となり、下回る部分については無効となります。無効となった部分は、就業規則で定めた労働条件によることになります。
ご相談の場合は、労働契約書の労働時間が9時~18時(所定労働時間8時間)とされている一方で、就業規則では9時~17時30分(同7時間30分)でともに1日の法定労働時間内であり、いずれの労働時間も労働基準法違反ではありません。しかし、労働者にとっては就業規則で定めた7時間30分が有利となります。
個別の労働契約で労働条件を定める場合には、法律、労働協約(労働組合と締結した協約)、就業規則との関係(優先順位)を意識しなければなりません。労働契約法では「就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第7条、第10条及び第12条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない」(第13条)と定めています。
したがって、労働条件は、労働基準法、労働契約法の法律に違反するものであってはならず、また労働協約、就業規則に違反するものであってもなりません。その優先順位は、(法律>労働協約>就業規則>労働契約)となります。労働者と労働契約を締結するにあたっては、この優先順位を理解して無効となるような労働条件で締結しないように注意しなければなりません。
今月のポイント
就業規則の労働条件と労働契約書の労働条件が異なる場合は、労働者保護の観点から労働者にとって有利な方が有効となる。また、労働条件における優先順位は法律>労働協約>就業規則>労働契約であり、労働契約の無効を防ぐためには、このことを理解して締結することが大切である。
労働者を雇用するすべての事業者は、労働基準法・労働基準法施行規則において、「法定四帳簿」を正しく作成・運用し、適正な労務管理を行うことが求められています。ここでは、労働基準監督署の調査に対応できる「法定四帳簿」の重要性と整備のポイントを見ていきましょう。
法定四帳簿とは
法定帳簿は、法令によって定められた帳簿です。「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の法定三帳簿に加えて、2019年4月1日から「年次有給休暇管理簿」が追加され、4種類の帳簿を整備し、保存することが義務付けられました。これらを「法定四帳簿」といい、いずれも必要事項が記載されていれば、どんな形式でも構わないとされています。保存期間は、2020年4月1日施行の改正労働基準法第109条により、5年に延長されました。現状は経過措置として従来の3年ですが、5年の保存期間を見据えて対応することが重要です。
労働者名簿の運用
労働者名簿は事業場ごとに、日雇労働者を除くすべての労働者について作成する必要があります。必須記載事項は、労働者の氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入れの年月日、退職の年月日とその事由、死亡の場合はその年月日と原因です。記載事項に変更があった場合は遅滞なく訂正しなければなりません。保存期間の起算日は「労働者の死亡、退職または解雇の日」です。
賃金台帳の運用
賃金台帳は事業場ごとに作成し、賃金支払いの都度、労働者ごとに遅滞なく記入する必要があります。必須記載事項は、労働者の氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、時間外・休日・深夜の労働時間数、基本給および手当額、賃金控除額です。保存期間の起算日は、「最後の記入日」となっています。賃金台帳は、一般的な給与明細や源泉徴収票での代用はできません。源泉徴収簿を兼ねた賃金台帳を使用する場合は、記載事項に記入漏れがないか確認しましょう。また日雇労働者に関しては、賃金台帳は必要ですが、賃金計算期間の記載は不要です。
出勤簿の運用
出勤簿は、労働者の労働時間を把握するための帳簿です。記載事項は、労働者の氏名、出勤日、出勤日ごとの始業及び就業時刻、出勤日別の労働時間数と休憩時間数、時間外・休日・深夜の労働時刻と時間数です。
厚生労働省作成の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置とガイドライン」によると、労働時間の把握はタイムカードやICカード、パソコンの使用時間記録などの客観的な記録により把握することが求められています。自己申告制においては、適正な時間把握を行うための十分な説明と、実態と申告が乖離する場合の実態調査が義務付けられています。2019年4月以降、客観的な労働時間の把握は、法的義務となっています。高度プロフェッショナル制度対象労働者を除くすべての労働者が対象となっているため、留意しましょう。
年次有給休暇管理簿の運用
すべての企業は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者含む)に対し、年5日については、使用者が時期を指定して取得させることが義務付けられています。使用者は、年次有給休暇を与えた時期、日数および基準日を労働者ごとに明らかにした帳簿を作成し、保存しなければなりません。労働者名簿や賃金台帳と併せて調製することも可能です。
法定四帳簿に対する是正勧告
法定四帳簿に起因する是正勧告では、帳簿を作成していない、記入漏れがある、賃金台帳を事務委託した会社に預けて自社で保存していない、などのケースがあります。年次有給休暇管理簿を除き、規定に違反した場合は労働基準法により30万円以下の罰金に処される場合があります。また労働基準監督署の調査の際に帳簿を提出しない、または虚偽の記載をした帳簿を提出した場合も処罰の対象となるため、適正な整備が重要です。
厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対する2022年度の監督指導結果を公表しました。これは時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象に、労働基準監督署が実施したもの。その結果、対象となった3万3218事業場の42.6%にあたる1万4147事業場で違法な時間外労働が確認されました。厚生労働省では是正・改善に向けた指導を実施。公表された監督指導結果にはその指導事例も紹介されています。
帝国データバンクが実施した「女性登用に対する企業の意識調査(2023年)」によると、女性管理職の割合は平均9.8%で、2013年の調査開始以来最高を更新しました。これを企業規模別に見ると「小規模企業」が平均12.6%で最も高く、「中小企業」が10.2%、「大企業」が7.5%と、規模が小さい企業ほど女性管理職の割合が高い状況となっています。一方、政府は社会の指導的地位に占める女性の割合が2020年代の可能な限り早期に30%程度になることを目指していますが、今回の調査で「女性管理職30%以上」の企業は9.8%にとどまっています。
総務省は、セキュリティ分野の有識者で構成される「サイバーセキュリティタスクフォース」での検討結果等を踏まえて「ICTサイバーセキュリティ総合対策2023」を取りまとめ、公表しました。「最近の動向」「今後取り組むべき施策」「今後の進め方」の3章から成り、今後取り組むべき施策では大規模サイバー攻撃に対応するloTボットネット対策など「情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保」への対策を提示。また、「サイバー攻撃への自律的な対処能力の向上」「国際連携の推進」「普及啓発の推進」についても言及しています。
中小企業の持続的成長を支援するために、経済産業省は金融庁、財務省と連携して「挑戦する中小企業応援パッケージ」を策定しました。パッケージでは、日本政策金融公庫等の資本性劣後ローンなど新型コロナウイルス関連の資金繰り支援において、一部で期間延長や限度額引き上げを行っています。また、挑戦意欲がある中小企業の経営改善や再生支援を加速するために、「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援強化会議」(仮称)を設置。官民金融機関による支援への取り組み状況等をきめ細かくフォローするとしています。
厚生労働省は、労働者の精神疾患が業務上によるものか否かの判断基準となる「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、業務により精神障害を発病した労働者に対して、より一層迅速かつ適正な労災補償を行っていくとしています。ここでは、その改定のポイントを紹介します。
うつ病などのメンタルヘルス疾患を持つ労働者が増加する中、厚生労働省では「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下、認定基準)を改正し、2023年9月1日付で厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました(概要下図①)。
これまでの精神障害・自殺事案については、2011年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づき労災認定が行われてきましたが、認定基準策定から10年以上経過しています。その間、直近においては、2020年5月に「パワーハラスメント」を「業務による心理的負荷評価表」に追加明示して具体的な出来事を明確化、同年8月には2以上の事業所で働く複数就業労働者に対する労働負荷に関連する「心理的負荷による精神障害の認定基準」と「脳血管疾患および虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準」の改正がありました。今回の改正は、近年の社会情勢や労災請求件数の増加を鑑み、最新の医学的知見を踏まえて「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を受けて改正されたものです。今後は、労働者の精神障害の発症が業務上によるものか否かは、この改正後の認定基準をもとに確認されることとなります。
精神障害に係る労災補償の現状
厚生労働省の患者調査によると「精神及び行動の障害」の推計患者数は増加傾向にあり、近年では50万人超の水準で推移しています。また、「令和4年中における自殺の状況」(厚生労働省・警察庁)によると自殺者は2万1881人で前年比874人増と増加傾向にあります。
また、現行の認定基準が定められた2011年度以降の精神障害の労災給付請求件数は増加の一途をたどっており、2019年以降は2000件を超えました。支給決定件数も2012年度以降500件程度で推移していたものが、2020年度には600件を超え、2022年度には710件と大幅に増えています。今回の改正はこうした現状を踏まえて行われたものであり、主なポイントとしては、①業務による心理的負荷評価表の見直し、②精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し、③医学意見の収集方法を効率化の3つが挙げられます。
業務による心理的負荷評価表の見直し
精神障害の労災認定にあたっては、「業務による心理的負荷評価表」が用いられ、表中の具体的出来事に照らし、その出来事による心理的負荷を「弱」「中」「強」と判断する具体的例が示されています。今回の改正により、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という、いわゆるカスタマーハラスメントが具体的出来事として追加されました。具体的には下図②の通りです。
これらの迷惑行為にいたる状況、反復・継続など執拗性の状況、その後の業務への支障、会社の対応の有無等を総合的に評価されることになります。
なお、認定要件として、次の①、②、③のいずれの要件も満たしている場合、労災補償の対象疾病の範囲を定めている規定(労働基準法施行規則別表第1の2)に該当する業務上の疾病として取り扱われます。
①本認定基準で対象とする疾病(以下、対象疾病)を発病していること。
②対象疾病の発病前おおむね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷 が認められること。
③業務以外の心理的負荷及び個体側要因(その個人が持っている脆弱性・反応性等)により対象疾病を発病したとは認められないこと。
ハラスメントなど繰り返される出来事が、「発病前6か月以内」の期間において継続している時は、開始時からのすべての行為を評価の対象とし、さらに出来事の起点が発病の6カ月より前であっても、その出来事が継続している場合には、発病前おおむね6カ月の間における状況等を評価されることになります。
精神障害悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
これまでは、精神的な持病が悪化した場合、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がなければ業務起因性が認められず、業務上災害とはなりませんでした。しかし、今回の改正により悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したと医学的に判断され、業務と悪化との間の因果関係が認められるときは、悪化した部分について業務起因性を認められることになりました。
医学意見の収集方法を効率化
専門医3名の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除いては、1名の意見で決定できるよう改正されました。これにより、労災認定までの時間を短縮できる事案が増加することが見込まれます。
今回の改正により、単純な労働時間の長さだけではなく、実際に発生した業務による出来事を、業務による心理的負荷評価表の「具体的出来事」に当てはめて負荷(ストレス)の強さを評価する要素が強くなります。実務においては、業務上災害として認定されるか否かではなく、こうした負荷が精神障害の原因になるリスクが高いという認識に基づき、職場環境の整備を行わなければなりません。
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