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現行の過労死認定基準は2001年に定められたものです。近年の働き方の多様化や職場環境の変化および最新の医学的知見を踏まえた「脳・心臓疾患の労災認定基準に関する専門検討会」の報告書に基づき、20年ぶりの見直しが行われました。
過労死等防止対策推進法では、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡またはこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」(第2条)を過労死等と定義し、その防止対策を推進し、毎年11月を過労死等防止啓発月間としています(第5条)。
厚生労働省は、この定義に基づき、労働者に発生した脳血管疾患(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞など)および虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)を労働災害と認定するための「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準」(いわゆる過労死認定基準)を定めていますが、令和3年9月14日に20年ぶりに改正・公表されました。
今回の改正においては、いわゆる過労死ラインは現状維持とはなったものの、過労死ラインを超えなくても労災認定される場合があること、労働時間以外の負担要因が新たに追加されたことが重要なポイントです。
●過労死ラインの見直し検討
過労死等の認定要件となる「業務による過重負荷」の判断においては、労働時間の長さなどで表される業務量は、業務内容、作業環境などを具体的かつ客観的に把握し、総合的に判断することになります。具体的には、次の3つの認定要件に基づきます。
①発病直前から前日までの間において、発症状態を時間的および場所的 に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと
②発症に近接した時期において、特に過重な業務(短期の過剰労務)に就 労したこと
③発症前の長時間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な
労働(長時間の過重労働)に就労したこと
これら認定要件のうち、③の長期間の過重業務に係る労働時間の基準が「過労死ライン」と言われるもので、以下の3通りの基準が示されています。
①発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって1カ月当たりおおむね80時
間を超える時間外労働が認められる場合
②発症前1ヵ月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる
場合
③発症前1カ月ないし6カ月間にわたり1カ月当たり、おおむね45時間
を超える時間外労働が認められる場合
これらの基準を超える労働時間が長くなるほど業務と発症の関連性が強いものと評価され、労災認定がされやすくなります。
今回の改定にあたり、前述の労働時間の基準の「80時間」を「65時間」に引き下げることも検討されましたが、最終的には現行ラインを維持することとなりました。
●労働時間以外の負荷要因
これまでの認定基準でも、労働時間以外の負荷要因も考慮されることにはなっていましたが、今回の改正により、新たに前述の過労死ラインとなる①または②の時間外労働の水準に至らないまでもこれに近い実態があり、加えて一定の労働時間以外の負荷が認められる場合は、総合的に評価して業務と発症との関連性が強いと評価される場合は、労災認定することを明確化しました。
労働時間以外の負荷要因としては、現行では勤務時間の不規則性(拘束時間の長い勤務、交替制勤務、深夜勤務など)、日常的に緊張を強いられる心理的負荷を伴う業務、事業場外における移動を伴う業務(出張の多い業務)、作業環境(温度、騒音など)が明示されていました。今回の改正では、勤務時間の不規則性について、新たに「休日のない連続業務」、「勤務間インターバルの短い勤務(インターバル時間がおおむね11時間未満の勤務)」が負荷要因として追加されました。
また、負担要因として、新たに「身体的負荷を伴う業務」が追加されるとともに、現行の「精神的緊張を伴う業務」については内容を拡充して「心理的負荷を伴う業務」となりました。「心理的負荷を伴う業務」については、「日常的に心理的負荷を伴う業務」(危険回避責任がある業務、極めて危険な物質を取り扱う業務)と「心理的負荷を伴う具体的出来事」(仕事の失敗、過重な責任発生、パワハラ、セクハラなど)に区分され、その負荷の程度が評価対象として追加されました。「身体的負荷を伴う業務」については、業務内容のうち重量物の運搬作業、人力での掘削作業などの身体的負荷が大きい作業の種類、作業強度、作業量、作業時間、歩行や立位を伴う状況などが評価対象として追加されました。
●対象疾病に「重篤な心不全」
これまでの認定基準においては不整脈が一義的な原因となった心不全症状等について、「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱うこととされていました。しかし、心停止とは異なる病態である心不全を「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱うことは適切でなく、また、不整脈によらず、心筋症等の基礎疾患を有する場合にも、業務による明らかな過重負荷によって当該基礎疾患が自然経過を超えて著しく憎悪し、重篤な心不全が生じることが考えられたため、不整脈によるものも含め「重篤な心不全」が認定対象疾病に追加されました。
●企業に与える影響と支援施策
このように厳しくなった認定基準に対応するためには、企業としても長時間労働・過重労働を減らし、過労死等の防止対策をより一層強化することが必要です。
そこでまず重要なのが、従業員の労働時間を適正に把握し、過労死ラインに抵触するような場合には指導を行うなどの対応が必要です。また、過労死や健康障害を防止するには、適正な勤務間インターバル制度の導入や柔軟な有休休暇の取得などによって休息時間を確保し、従業員が心身をリフレッシュできる体制を整えることです。そして、従業員が自信の不調に気づいたときに相談できる窓口を設置するなどの職場環境体制を整えることも必要でしょう。
厚生労働省は、労働基準監督署が監督指導を行った結果、令和2年度に不払いとなっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上の事案を取りまとめ、公表しました。是正企業数は1062で前年度比549の減、対象労働者数は6万5395人で同1万3322人の減、支払われた割増賃金合計額は69億8614万円で同28億5454万円の減、支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり658万円、労働者1人当たり11万円、などとなっています。
2022年度の雇用保険料率をめぐる議論が厚生労働省の労働政策審議会で行われていますが、コロナ禍に伴う失業手当等の給付額の増大に伴い雇用保険の積立金が減少。2022年度の保険料率引き上げの可能性があります。雇用保険の積立金は令和元年度末現在段階で4兆4871億円あったのが、令和2年度末には1兆9826億円に減り、令和3年度末には4039億円程度になると見込まれています(10月19日現在)。保険料率の確定は2022年末までとなっており、注目されます。
2022年4月より、3段階で施行される育児・介護休業法の改正ポイントについて、企業に求められる対応を確認します。
●改正の流れ
育児休業法は、女性の社会進出に伴い、1992年4月に施行されました。以降、少子高齢化が加速するなか、出産や育児に関連した労働者の離職を防ぎ、仕事と家庭生活の両立を支援する対策の充実が求められ、定期的に改正が行われています。
2009年に、「パパ休暇(本改正により廃止)」や「パパ・ママ育休プラス」が導入されると、男性の育休取得や育児参画を推進する動きが活発化しました。
結果、2020年度には、男性の育休取得率は12.65%となり、上昇傾向にあるものの未だ低い水準にとどまっています。今回の改正では、更なる男性の育児休業取得推進を目指し、男女問わずワーク・ライフ・バランスを可能とする職場環境を整備するため、段階的に改正を行う方針です。
●第一段階
2022年4月1日施行の改正は、①雇用環境の整備と、個別の周知・意向確認の措置の義務化、②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和です。企業は、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するため、育児休業制度に関する研修の実施や相談窓口の設置、取得に関する事例の収集および提供、取得促進に関する方針の周知のいずれかの措置を講じる必要があります。また、本人または配偶者の妊娠・出産の申し出をした労働者に対して、企業は育児休業制度に関する事項や申し出先、給付に関することや休業期間中の社会保険料の取り扱いなどについて周知する必要があります。その上で、育休の取得意向の確認を個別に行わなければなりません。周知・確認の方法としては、面談や書面交付、FAXや電子メールなどのいずれかとなっています。
また有期雇用労働者の育休取得要件は、現行の雇用期間1年以上という要件を撤廃し、子が1歳6カ月までの間に契約満了することが明らかでない場合のみとなりました。育児休業給付についても同様に緩和されており、無期雇用労働者と同様の扱いとなっています。
●第二段階
2022年10月1日施行の改定は、①「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設と、②育児休業の分割取得です。「産後パパ育休」は、通常の育児休業とは別に取得可能な制度であり、休業の2週間前までに申し出をすることにより、子の出生後8週間以内に分割して2回、合計4週まで取得可能となります。
また、通常の育児休業制度では原則不可である休業中の就業について、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲内で可能となっています。なお、就業可能日には上限があり、休業期間中の所定労働日か所定労働時間の半分、または休業開始・終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満と定められています。
また育児休業の分割取得については、「産後パパ育休」の創設に伴い、原則分割不可から、分割して2回取得することが可能となりました。「産後パパ育休」も、就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下である場合は、出生時育児休業給付金として育児休業給付の対象となります。
●第三段階
2023年4月1日施行の改正は、育児休業取得状況の公表の義務化です。従業員数1000人超の企業は、育児休業などの取得状況を年に1回公表することが義務づけられます。具体的な公表内容は、改めて省令で定められる予定です。他の法令同様、今後、対象企業の規模が段階的に中小企業へと拡大される可能性があり、事業規模にかかわらず、改正内容には注視する必要があります。
最後に、育児休業などの申し出・取得を理由に、解雇や契約変更などの不利益な取り扱いは禁止されています。また企業には、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。就業規則などを見直し、段階的な改正点への対応を今から検討しておきましょう。
Q 入社約3カ月程度の社員から妊娠の報告がありました。会社としては、退職予定者の代わりに引き継ぎで仕事を教えていたので、これから産前産後休暇、育児休業となると少なくとも1年以上休業させることにもなります。退職を求めることはできるのでしょうか。(K社・総務部)
A 労働基準法では、産前の6週間(双子以上の妊娠の場合は14週間)は、妊娠中の女性労働者が請求した場合、または出産後8週間は本人からの請求を問わず休暇を与えなければなりません(労基法第65条第1項、第2項)。
したがって、産前の休業は、本人からの請求がない場合は、本人の体調しだいで出産直前まで働き続けることを認めることもできますが、産後8週間については本人からの希望があっても、復職させることはできません。ただし、産後6週間経過後については、医師が認めた場合に限り、復職することが可能です。
また、育児・介護休業法に基づき、通常、産後8週間を経過した日から子が1歳に達するまでの育児休業の申し出があった場合には、育児休業を与えなければなりません。ただし、子が満1歳になった時点でも継続して子供を養育していて、かつ、保育所に入所できていないなどの事情がある場合は1歳6カ月まで、さらに1歳6カ月の時点で同様の事情が認められた場合は2歳までと、それぞれ育児休業期間を延長することができます。
このように産前産後休暇、育児休業はいずれも法律上の制度であり、入社直後であることを理由に、会社が一方的に、これを拒否することはできません。女性労働者について産前産後の休業期間中と、休業期間終了後30日間は、原則として、解雇することはできません(労基法第19条)。また、男女雇用機会均等法では、結婚、妊娠、出産を理由に退職を予定することおよび結婚、妊娠、出産を理由とする解雇その他不利益取り扱いをすることは禁止されており、妊娠中および産後1年を経過していない女性労働者の解雇は無効となります。ただし、育児休業については例外として、従業員の過半数を代表する者(過半数労働組合がある場合は当該労働組合)との労使協定において、雇用期間が1年未満の労働者は、育児休業の適用除外とする旨を締結している場合には、その申し出を拒否することができます。ご相談のように、入社直後の妊娠、出産・育児に伴う休業が生じるようなことが見込まれる事態を回避するには、あらかじめ育児休業については適用除外となる労使協定を締結しておき、対象となり得る未婚・既婚の女性従業員などを採用する場合においては、事前に自社の出産・育児に関する制度を説明しておくべきでしょう。
ところで、2021年6月に育児・介護休業法が改正されました。男女問わず仕事と育児と介護の両立を可能にするためにこれまでの制度の一部が改定され、2022年4月より段階的に施行されることになっています。その一つが、男性版産休・育休制度と言われる「出生時育児休業」です。この制度は、子供が生まれてから8週間以内に合計4週間(28日)まで、夫も育児休業を取得することができます。取得方法は合計28日を2回に分割しての取得が可能です。また、これとは別に、子が1歳に達するまでの間、夫が育児休業を2回に分割して取得することもできるようになります。「出生時育児休業」と併せて取得した場合には、最大4回に分けて育休取得が可能となります(2022年10月1日施行)。夫婦交代で育児休業をすることで、妻の職場復帰を早めることもできます。このように、出産および子育ては女性のみという時代から夫婦で行う時代となりつつあります。労働力が減少する中で女性は貴重な戦力ですので、これを機会に両立が可能とする職場環境整備をすることも重要です。
今月のポイント
産前産後休暇、育児休業は法律上の制度であり、入社直後であっても取得を認めないことはできない。
育児休業は、労使協定でその対象者を決めておくのが望ましい。
新型コロナウイルス感染拡大はビジネスモデルや働き方にさまざまな影響を及ぼしました。それによる変化や一種のひずみは、収束した後もある程度残るものと考えられます。どのような変化が生じたのか。日本能率協会が実施した最近の調査結果から見ていきます。
●ビジネスモデルや事業形態の変更を行った企業が5割超
この調査は「当面する企業経営課題に関する調査」として、その時々の時機に沿ったテーマで定期的に行っている調査です。1979年から毎年行われており、今年は7~8月に実施、517社が回答しました。先ごろ、その結果の第2弾として新型コロナウイルス感染症拡大が事業や働き方へどう影響を与えたかについての調査結果が発表されました。
新型コロナ感染拡大の影響を踏まえて、ビジネスモデルや事業形態を変更した企業は全体の53.3%でした(「大きく変更した」「変更した」「少し変更した」の合計)。昨年夏の同種の調査で、「変更する必要がある」と回答していた企業は7割超で、実際に変更した企業が相当数を占めたことがわかります。業種別では「宿泊・飲食・給食サービス」の割合が83.4%と特に高くなっています。
●収束後の在宅勤務
大企業は半分以上が継続実施
コロナ禍が事業活動に及ぼしたさまざまな影響への対応状況についての質問に対しては、「柔軟な働き方や勤務形態の拡充」に取り組んだとの回答が9割近く(89.1%)に達し、特に高い割合を示しました。次いで「社内情報システムの強化・拡充」83.6%、「営業手法の見直し」75.1%、「社内文書の電子化の推進」73.1%となっています。
在宅勤務の浸透がコロナ禍で進みましたが、新型コロナ感染拡大収束後の在宅勤務実施については、全体では約4割が継続して実施すると答え、「縮小して実施する」も3割となるなど、合わせて7割以上が実施の意向を示しています。特に大企業では継続実施が51.6%と過半数となりました。一方で中小企業では「中止する・実施しない」が35.8%と一定割合に達しています。
●「ストレスを抱える社員」増との回答が5割超
下のグラフは、新型コロナ感染拡大による社員・職場への影響を示したグラフです。「ストレスを抱える社員が増えた」が55.0%とその高さが際立っています。また「社員同士の意思疎通が難しくなった」も49.5%と半数近く。就労環境の変化でメンタル面のケアが必要になっていることを示しています。
注意すべきは「人材育成がしにくくなった」も47.9%と高率になったこと。「意思疎通」の難しさと表裏一体にあるようで、リモート時代はしっかりとした人材育成手法の構築が求められているようです。
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