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2022年6月号

 こんなときどうする労務トラブル回避 QA 
 今月の相談 
育児休業終了後の育児短時間勤務とフレックスタイムの併用

Q 育児休業終了後、職場復帰した社員が育児短時間勤務を希望し、1日6時間勤務することになりましたが、弊社で一部導入しているフレックスタイム制度の併用もしたいとの相談がありました。併用させなければならないでしょうか。              (I社・人事部)

A 育児短期間勤務制度とは、育児・介護休業法(略称)に基づき3歳までの子を養育する労働者が、1日の所定労働時間を原則6時間とすることができる制度であり、対象労働者から申し出があった場合には会社はそれを拒むことはできません。また、3歳以上小学校就学前の子どもを養育する労働者に対しても、所定労働時間の短縮措置を講じるよう努めなければならないこととされており、小学校就学前までの制度とするか否かは企業の裁量によります。
 このような育児短時間勤務制度は、労働者にとっては、育児と仕事の両立を図りながら働き続けることができ、会社にとっても人材の確保・維持ができ、相互にメリットがあります。
 育児短時間勤務は、前述の通り1日6時間を原則としていますが、勤務形態の設定については特段の定めはありません。例えば、始業9時・終業18時、休憩時間1時間を除く8時間労働制の会社で、出社時刻を1時間遅くして、退社時間を1時間早める時短勤務で保育所の送り迎えを可能とするようなケースも多く見受けられます。なお、育児短時間勤務で6時間勤務の場合、労働時間が6時間を超えることがない限り、休憩時間を設けなくとも違法ではないので、休憩を取らないことを前提に6時間勤務を設定することも可能です。
 今回の相談はフレックスタイム制との併用についてです。フレックスタイム制とは、一定の労働時間の清算期間を設けて、あらかじめその期間について定められた総労働時間の範囲内で、所定労働日の始業及び終業の時刻を労働者が自由に決めて働く制度です。フレックスタイムには完全フレックス制(出退社の時刻を労働者が自由に決め勤務するもの)とコアタイム(必ず勤務していなければならない時間帯を決めるもの)を設定する場合があります。
 フレックスタイム制を導入する場合には、就業規則等への定めと従業員の過半数労働組合または過半数代表者との労使協定で、①対象となる労働者の範囲(各人ごと、部ごと、課ごとなど)②労働時間の清算期間(通常は賃金計算期間等)、③清算期間の起算日、④清算期間の総労働時間(週平均40時間以内)、⑤標準となる1日の労働時間などを定めなければなりません。
 以上の点から、フレックスタイム制と育児短時間勤務制との違いは、フレックスタイム制が清算期間内の働くべき総労働時間の範囲で労働日の始業・終業の時刻およびその日何時間働くかを自由に決めることができるのに対して、育児短時間勤務は原則1日6時間を必ず働かなければならない点にあります。働き方の自由度としては、フレックスタイム制の方が高いと言えます。ただし、フレックスタイム制の場合、清算期間の総労働時間は働かなければなりませんので、育児短時間勤務制度より総労働時間は長くなります。
 そこで、育児短時間制度とフレックスタイム制の両方を併用することも可能です。たとえば、既にフレックスタイム制度を導入している部署で働く労働者から育児短時間勤務制度の申し出があった場合には、それを拒むことはできません。この場合、完全フレックス制を導入している場合は、清算期間内の総労働時間は標準となる1日の労働時間は原則6時間、通常の労働者より少なく、その範囲での労働時間を調整して働いてもらうことになります。また、コアタイムを設定している場合は(通常勤務者より短くするなどの適用)、原則6時間での適用も可能でしょう。

 今月のポイント 

育児短時間制度とフレックスタイム制の併用は可能。
この場合、清算期間内の総労働時間は通常の労働者より少なくなる。

 法令 採用活動に影響を与える
求人不受理となる対象企業の拡大と対応策

ハローワークや職業紹介事業者等が受ける求人について、一定の労働関係法令違反のある求人者からの求人の申込みを受理しないことができることになっています。労働力の確保が厳しい中で採用活動への影響を踏まえて、求人不受理とならない社内体制づくりを整備することが必要です。

 新型コロナの感染拡大により大きく低下していた有効求人倍率ですが、急速に回復してきています。厚生労働省が公表した令和4年の一般職業紹介状況による有効求人倍率(求職者1人あたりについて、何件の求人があるかの指標)の動向を見ると、1月が1.20倍、2月と3月が1.21倍と採用市場は回復しつつあります。その一方で就職後の求人トラブルを未然に防止するために、企業の求人活動における法令遵守がこれまで以上に求められるようになってきています。
●求人の原則と求人不受理
職業安定法では、ハローワークや職業紹介事業者等(大学や特定地方公共団体などを含む。以下ハローワーク等)は、求人の申込みは全て受理しなければならないとされ、原則として全ての求人を取り扱うことが義務付けられています。しかし例外として、①求人の申込み内容が法令に違反する求人、②賃金、労働時間その他の労働条件が通常のものと比較して著しく不適当である求人、③労働関係法令に違反し行政処分、企業名の公表等の措置が講じられた者からの求人、④従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件等の明示が行われない求人、⑤暴力団等の関与する求人、⑥正当な理由なくハローワーク等が求める報告に応じない求人については申込みを受理しないことができるとされます。これを「求人不受理」と言います。
●求人不受理の対象となる法令
 現在、求人不受理の対象となる法律及び関連条項は下の表の通りです(令和4年3月31日)。今後、労働関係法諸法令の改正により新たな規制が追加されると、それらに対応して増えていく傾向にあります。
●育児・介護休業法違反の追加
 
2021年6月に男性の育児休業の促進を図るための育児・介護休業法が改正され、今年4月1日と10月1日に段階的に施行されます。
 その中でいくつかの義務や不利益取扱いの禁止条項が加えられました。それに伴い職業安定法施行令も改正され、ハローワーク等での求人不受理の対象として以下の違反について追加されることになりました。なお、育児・介護休業法の施行に合わせて段階的に施行されることになります。
①本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たことを理由とした不利益取扱いの禁止(4月1日施行)
②出生時育児休業の申出に関する事業主の雇用管理上の義務(10月1日施行)

③出生時育児休業の申し出をしたこと等を理由とした不利益取扱いの禁止(10月1日施行)
 これらの規程に違反し、法違反の是正を求める勧告に従わず、企業名を公表された場合は求人不受理の対象となります。従って、違反事実が発生することなどがないように法改正に則して育児・介護休業規定を改定するほか、社内体制を整備する必要があります。

●求人不受理の流れと対応策
求人不受理は表の労働関係諸法令への違反の状態があった場合に直ちに行われるものではありません。例えば、労働基準法及び最低賃金法の規定のうち、賃金や労働時間等に関する対象条項の違反に対して、①過去1年間に2回以上同一条項の違反について是正指導を受けていること、②対象条項違反により送検され、企業名が公表された場合などが求人不受理の対象となります。また、職業安定法、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法違反については、法違反の是正を求める勧告に従わず、企業名が公表された場合が求人不受理の対象となります。
 求人不受理の期間は、法違反に対して、是正勧告を受けた場合、企業名が公表された場合、書類送検された場合で、それぞれ異なります。労働基準法および最低賃金法違反で前述の①に該当し是正勧告を受けた場合には、是正されるまでの期間に加えて、是正後更に違反を重ねないことを確認する期間として、6か月が経過するまでの期間となります。送検され企業名が公表された場合には、原則として、送検された日から1年経過するまでとなります。職業安定法、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法違反については、法違反が是正されるまでの期間および是正後6ヵ月を経過するまでの期間となります。
 このように、求人不受理は法違反があっても即座に行われるわけではないので、是正勧告や指導に従って改善し、行政官庁に報告する対応が必要となります。
 なお、職業紹介事業者は、求人の申込みが前段の求人申込を受理しないことができる例外事項①~⑥に該当する事実があるか否か求人者に対して自己申告を求めるべきとされており、職業安定法では、求人者は、職業紹介事業者からその求めがあったときは、正当な理由がない限り、応じなければなりません。求人者に自己申告を求め、それを拒否された場合には、求人の申込みを受理しないこともできます。

 年金 制度設計上のポイントを整理しておきましょう
確定拠出年金の改正ポイントと活用のメリット

2020年6月、長期化する高齢期の経済基盤の充実を目的として、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が公布されました。今回は、改正内容のひとつである確定拠出年金制度について、改正ポイントとその活用メリットをお伝えします。

●企業年金制度の仕組み
企業年金とは、老後の生活保障を目的として、公的年金に加え、企業が従業員を対象に任意で実施する年金制度です。1960年代以降、戦後の高度成長期やバブル崩壊といった社会・経済情勢を背景に、退職金に代わる制度として普及してきました。
 2001年には、新しい企業年金として、確定拠出年金法と確定給付企業年金法が制定され、順次施行されました。主に退職金制度の全部または一部を切り替え、金融機関など社外に積み立てる外部積立として利用され、現在では一時金の受給も可能となっています。
 企業年金は、大きく給付型と拠出型に分類されます。確定給付企業年金は、事業主が受給額(または支給額の計算方法)を決定した上で、拠出する掛金を設定する仕組みです。年金規約などに基づき一定期間支払う必要があるため、支払いを終えるまでは債務となり、企業によって負担が大きい面があります。
 一方、確定拠出年金(DC)は、事業主が設定し、毎月拠出される掛金額に応じて、従業員自ら運用商品を選択します。受給額は、運用した成果により左右される仕組みとなっています。掛金を支払った段階で債務が消滅するため、退職給付会計の対象とならず、企業にとって財務上のメリットがあります。

●2020年の段階的制度改正
今回の改正では、中小企業を含むより多くの企業や個人が制度を活用できるように、確定拠出年金制度について見直しが行われました。2022年4月には、公的年金の受給開始時期の選択肢拡大に併せて、企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)と個人型であるiDeCoともに、受給開始時期の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。
 また5月以降、企業型DCについては、企業の高齢者の雇用状況に応じたより柔軟な制度運営を可能とするため、原則として厚生年金被保険者(70歳未満)であれば誰でも加入者とすることができます。iDeCoについては、高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、国民年金被保険者であれば65歳未満まで加入可能となりました。更に10月以降、企業型DC加入者のiDeCo加入に関する要件が緩和される予定です。

●拠出型の導入メリット①
確定拠出年金制度には、3つの税制優遇があります。1つ目は、掛金が全額非課税で積み立てが可能です。事業主が負担する掛金は、福利厚生費として損金計上することができます。2つ目は、運用益が非課税であるため、年金資金を効率良く積み立てることができます。3つ目は、受給方法に応じて控除が受けられ、税軽減ができる点です。一時金として受給した場合は退職所得控除、年金として受給した場合は公的年金等控除を活用することができます。
●拠出型の導入メリット②
企業型DCに関する制度設計は、導入目的に応じ、自社に適した制度設計を行うことが可能です。中でも比較的新しい「選択型」は、掛金が社会保険料の対象外となり、折半負担する事業主にとっても負担軽減が期待できる制度です。従業員は、事業主から支払われる報酬のうち、その一部を給与として受け取るか、企業型DCの掛金として受け取るかを選択します。掛金とした場合、給与は減額され、その減額分は生涯設計手当などの名称で、積み立てられます。税や社会保険料の負担が軽減される上、企業は新たな原資を準備する必要がないため、中小企業も導入が容易な仕組みとなっています。
 その他、掛金を給与に上乗せして支給する方法や、選択型と上乗せ支給を合わせたもの、事業主が拠出する掛金の範囲内で、従業員が掛金を上乗せするマッチング拠出など、様々な設計方法があります。今後、福利厚生や退職金の代替制度として、検討する価値は十分にありそうです。

労務 News BOX

中小企業のDXに役立つ
「手引き」と「AI導入ガイドブック」

 経済産業省は、中堅・中小企業等のDX推進に向けた「中堅・中小企業向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」と、中小企業がAIを導入する際のノウハウをまとめた「中小企業向けAI導入ガイドブック」を取りまとめました。「手引き」では、DXの進め方や、デジタルガバナンス・コードを実践している例などを紹介。「ガイドブック」は、AI導入のためのチェックリストやワークシートなどで、具体的な導入手順が学べる内容となっています。

段階的引き上げと税金投入の道筋付ける
改正雇用保険法成立

 3月30日に改正雇用保険法が国会で成立しました。3月現在0.9%だった保険料率は4月から0.95%に引き上げとなり、10月から2023年3月までが1.35%へと更に引き上げられます。労働者負担分は9月まで現在と同じ0.3%で、10月~3月が0.5%となります。また雇用情勢の変化に対応して、国庫から雇用保険に臨時的に財源を投入できる仕組みも作られました。なお、関連法も改正され、例えば職業訓練内容を都道府県ごとに設定できるようになります。

10月からはアルコール検知器使用も義務化
安全運転管理者の責任業務拡大

 4月から、安全運転管理者(保有台数など一定条件に該当する自動車を使用する事業所に選任が義務付けられている)は、目視による運転者の酒気帯びの有無のチェックと記録の保管が義務付けられています。10月からは酒気帯びの有無の確認にアルコール検知器の使用が義務付けられます。飲酒運転撲滅に向けた企業に対する新たな義務で、自動車を保有する事業所は趣旨を理解し対応しましょう。検査と記録の作業負担軽減を目的とした新システムも登場してきています。

就職活動中の学生等をケア
ハラスメント防止対策を強化

 厚生労働省雇用機会均等課では、就職活動中の学生をハラスメントから守り、より安心して就職活動に取り組める環境を整備するため、今年3月以降、さまざまな取り組みを順次実施しています。具体的には、大学生に対する出前講座(就活ハラスメント防止対策関係セミナー)の実施、就活ハラスメントに遭った学生へのヒアリング実施、就活セクハラを起こした企業に対する指導の徹底、大学生等に対する就活ハラスメント関係の周知啓発、などとなっています。

厚生労働省の検討会が方向性を示す
採用時に将来の就業場所等の変更の範囲を明示?

 現行の労働基準法では、労働条件の明示について雇入れ直後の就業場所や従事すべき業務を明示することとされていますが(15条)、これに加えて将来の就業場所や業務の変更の範囲も明示すべきだという考え方が、先ごろ決定した厚労省の検討会(多様化する労働契約のルールに関する検討会)の報告書に盛り込まれました。今後審議会で議論され報告書が妥当となれば、国会審議の手続きを経て法改正となります。報告書には労働条件変更の際の文書による明示の義務化も盛り込まれています。

障害者の雇用促進関連の法律に基づく
適性実施勧告は教育委員会1機関のみ

 国および都道府県の機関については、障害者雇用促進法において、雇用状況に改善が見られない場合、障害者採用計画の適性実施を勧告できることになっています。令和3年度においては都道府県教育委員会について1機関に、適性実施を勧告しました。それ以外の令和2年6月1日時点で法定雇用率未達成の都道府県等の機関については、令和3年1月1日を始期とし、同年12月末を終期とする障害者採用計画を作成指導の結果、一定の改善が見られたため、勧告対象になりませんでした。


 調査 新卒で入社した人の入社前後の志向の変化
人事定着のポイントは
公私で相談しやすい環境作り

新卒で採用した人材は、長期的に企業の中枢を担っていくことが期待される戦力です。就職後、短い期間に離職志向が芽生えないようにするには、どうすればいいか。新卒者の入社前後の志向を調査した結果から見ていきます。

●入社前に転職志向でも約3割は勤続志向に変わる
 この調査は大学生や大学院生の新卒での就職活動を行った人を対象に、入社前時点と入社後約半年の時点における勤続志向と離職志向の変化などについて尋ねたものです。主催は公益社団法人全国求人情報協会。ここでは2021年4月入社者を対象にした志向の変化を中心に見ていきます。
 入社前と入社後の就業意識の変化の結果は下の表のようになりました。入社前に勤続志向があったのは全体の約4分の3。入社前から転職志向だったのが全体の約4分の1です。それが入社後は、勤続志向だった人の約26%が転職志向かすでに離職してしまい、転職志向だった人の28%が勤続志向へと志向を変化させました。勤続志向⇒転職志向と転職志向⇒勤続志向に変化した割合は2ポイント程度の差異で、入社後に会社側がどのような環境を整えるかで、どちらにも転じる可能性があることを示しています。

●指導担当に担当業務以外も相談できることが大事
指導担当社員にどの程度まで相談できるかと、適職意識との相関を調べたところ、「担当業務のこと以外も含めて相談している(していた)」人の約56%は適職意識(「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」)を感じており、一方で担当業務についてのみ相談している(していた)人は、適職意識は21%に留まりました。指導担当社員は、担当業務以外の領域についても丁寧に説明することが、離職志向醸成を回避するのに一定の効果があるようです。
●何でも相談できる先輩社員が新入社員のやる気を生む
左下のグラフは入社後に感じた企業風土別に、適職意識との相関を見た結果を示したものです。適職意識が最も醸成されるのは、「若手社員の仕事や私生活についての相談相手が決まっている」という企業風土を感じた層で、全体の6割以上が適職意識を持つという結果になりました。
 逆に「ほぼ毎日残業をしている」「『人手が足りない』と思うことが多い」「いつも納期や締め切りに追われている」という企業風土は、やはり適職意識の割合が低くなりました。また「一人一人が独立して行う仕事が多い」という企業風土は、必ずしも適職意識の高さにつながらないようです。放っておかれるのではなく、先輩からの目配りを感じることができる職場が、適職意識につながっているようです。

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